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生成AIの停止時に備え、中小企業が手動切替で業務を継続する仕組みを表現した、AI開発環境と物理スイッチ付きのバックアップ設計図を描く写実的なビジネス技術イメージ

生成AIが止まった日、中小企業を救った手動切替の設計図

20 min read

朝の光が、青葉ノート社の窓辺に細く差し込んでいた。カスタマーサポート主任の里奈は、届いた問い合わせを開き、Claude APIが作った要約と回答案を確認していたが、その画面だけが白いまま、何度試しても返事をしなかった。

「また遅れているのかな……」

Teamsには、「Claudeが開かない」「Claude Codeの処理が進まない」という声が次々に届いた。問い合わせの分類も、回答案の作成も、担当者への通知も、いつの間にか生成AIの流れに乗っている。里奈はネットワークの不調か、Anthropic側の障害か、APIキーや利用上限の問題かを考えたが、切り分ける手順も、手動切替を決める人も決まっていなかった。止まったのは画面だけではない。AIと人で分担していた、中小企業の仕事の流れそのものだった。

01

第1章 朝の窓辺で、Claudeの返事を待つ

窓辺でClaude APIの回答案を確認するサポート主任

第1章 朝の窓辺で、Claudeの返事を待つ - 本文

朝の七時五十分。青葉ノート社のサポート窓口に、キーボードを打つ音が小さく響いていた。窓辺には細い光が伸び、まだ少し冷たい空気が、開いたブラインドのすき間から流れ込んでいる。

里奈はコーヒーをひと口飲み、受信箱の一番上に届いた問い合わせを開いた。画面の左側には、お客さまの文章が表示されている。右側には、Claude APIが作った問い合わせ分類と、回答案が並んでいた。

「新しい冷蔵庫に替えたら、アプリにログインできなくなりました」

Claudeは、問い合わせを「機種変更後のログイン」とまとめていた。FAQの「端末変更時の手順」と、過去に似たお客さまへ送った対応履歴も、回答案の下に表示されている。

里奈は、案内の順番を確かめた。古い端末でログアウトすること。新しい端末で登録メールアドレスを入力すること。最後に、届いた確認メールを開くこと。どれも社内の手順書と合っている。

「ここだけ、少しやわらかくしようかな」

里奈は、「ログインできません」ではなく、「次の手順でお試しください」と書き直した。それから回答案を読み返し、事実と違うところがないかを確認して、送信ボタンを押した。

送信が終わると、画面の端に小さな表示が出た。回答だけでは判断できない問い合わせは、Claudeが無理に答えない設計になっている。「担当者の確認が必要」と表示され、里奈が選べるようになっていた。

たとえば、返金の条件が書かれていない問い合わせや、契約内容に関わる相談だ。そうした内容は、AIがもっともらしい答えを作るより、担当者が契約書や顧客情報を確認したほうが安全だった。

「これは法務に確認。こっちは営業の田中さんへ」

里奈が担当部署を選ぶと、その問い合わせは案件になった。案件とは、担当者が引き継いで対応する仕事のまとまりだ。お客さまの文章と要約、参照したFAQ、里奈のメモが、ひとつの画面にそろった。

すぐにMicrosoft Teamsへ通知が届く。営業の田中から、「確認します」と返事が来た。法務の美咲からも、契約番号を教えてほしいというメッセージが届いた。

「今日も、ちゃんと流れてるね」

隣の席の健太が、受信箱をのぞき込んだ。里奈はうなずき、次の問い合わせを開いた。AIが要約し、人が確かめ、必要な仕事だけを担当者へ渡す。朝の窓口は、その流れで静かに動いていた。

里奈は、三年前なら一件ずつ文章を読み、過去のメールを探し、担当者へ同じ説明を送っていたことを思い出した。今は、最初の整理をClaudeがしてくれる。そのおかげで、里奈は回答の言葉と、お客さまが本当に困っていることに時間を使えた。

ただし、すべてを任せているわけではない。お客さまの名前や契約番号を確認するのも、案内が社内の決まりに合うか確かめるのも、最後に送信するのも里奈の役目だった。

「便利だけど、返事をそのまま信じるものじゃないよ」

里奈がそう言うと、健太は画面を見ながら笑った。

「だから、里奈さんの確認が入るんですね」

「うん。AIは速い。でも、責任を持って送るのは人だから」

そのとき、次の問い合わせを開いた画面が、数秒だけ白くなった。里奈はマウスを動かし、もう一度読み込みのボタンを押した。やがて分類と回答案が戻ったので、彼女は小さく息を吐いた。

「もし、この画面が開かなかったら……どうするんだろう」

問いは、窓の外へこぼれるように消えた。手元には、まだ開いていない問い合わせが何通も残っている。里奈は考えるのをやめ、次の一通へ指を伸ばした。

昼前、Teamsに別の声が流れた。

「Claudeが開かない」「Claude Codeの処理が進まない」

Claude Codeは、文章だけでなく、プログラムの作業を助ける道具だ。サポート窓口の仕組みを見ている担当者も使っているため、その処理が止まると、問い合わせの整理だけでなく、社内の小さな修正作業まで遅れてしまう。

里奈は白い画面を見つめた。ネットワークの不調かもしれない。Anthropic側の障害かもしれない。サービスにつなぐ鍵であるAPIキーの問題や、使える量の上限に達した可能性もある。

けれど、どこから確かめるかは決まっていなかった。誰が停止を宣言するのかも、手動で対応すると決める人もいない。里奈の手の中で、次の問い合わせだけが、返事を待ったまま静かに光っていた。

02

第2章 青い画面が返事をしなくなった日

Claude APIの白い画面を見つめる里奈と社員たち

第2章 青い画面が返事をしなくなった日 - 本文

朝の業務が始まって間もなく、里奈の画面からClaude APIの回答案が消えた。問い合わせの本文は届いているのに、要約も、返信文も、白い欄のまま表示されなかった。

里奈は画面を閉じ、もう一度開いた。通信を確かめるため、社内ポータルとメールも開いたが、どちらもいつも通り動いている。彼女は問い合わせを選び直し、再実行のボタンを押した。

「また遅れているのかな……」

小さな円が回り続けた。やがて表示は止まり、返事のない白い画面だけが残った。里奈は時計を見てから、隣の席の美咲に声をかけた。

「美咲さん、そちらのClaudeは開いていますか?」

「いま確認します。……あれ、私の画面も進みません」

その直後、Microsoft Teamsの窓に通知が重なった。担当者から、「Claudeが開かない」「Claude Codeの処理が進まない」という短い報告が、続けて届いた。問い合わせの分類、回答案の作成、担当者への通知まで、青葉ノート社の朝は生成AIの流れに沿って動いていた。

里奈は自分の端末を疑った。Wi-Fiを切り替え、ブラウザーを変え、別の端末でも同じ画面を開いたが、白い欄は変わらなかった。社内ネットワークの不調なら、全員ではなく一部の端末だけが止まるかもしれないし、端末の問題なら別のパソコンで動くはずだった。

「航さん、少し見てもらえますか。うちのネットワークでしょうか」

情報システムを担当する航は、席を立つと、里奈の画面をのぞき込んだ。社内の接続状況を確認し、別の回線からClaude APIへつなぐテストもしたが、結果ははっきりしなかった。航は次に、利用中のアカウントとAPIキーを確かめた。

「APIキーは、サービスにつなぐための合言葉みたいなものです。これが無効になると、依頼は届きません。ただ、今の表示だけでは、キーの問題か、相手側の問題かは決められません」

航は管理画面を開き、利用上限も確認した。短い時間に送れる依頼の数を制限する、いわゆるレートリミットに達している可能性もあった。けれど、エラーの記録は一部しか残っておらず、担当者がそれぞれ再試行していたため、どの依頼が最初に止まったのかも追えなかった。

里奈はAnthropicの公式ステータスページを開いた。障害を知らせる表示はまだ見当たらない。ページの情報は反映まで時間がかかることもあると書かれていて、正常に見えることが、青葉ノート社だけの問題だという証拠にはならなかった。

航はSNSと第三者監視サービスも確認した。そこには「つながりにくい」「処理が返らない」という投稿が少しずつ現れ始めていたが、地域や契約による違いまではわからない。画面の向こうで何かが起きている気配はあっても、誰が、どこで、何を直せばよいのかは見えなかった。

「公式には出ていません。でも、うちだけとも言い切れません」

里奈はTeamsに届いた依頼を一つ開いた。別の担当者が、同じ問い合わせをすでに処理中にしている。元の担当者も再試行を続けていたらしく、同じ顧客への回答案が二つ、別々の場所で作られようとしていた。

「この問い合わせ、私が引き取ります」

「待ってください。私もいま再実行しています」

二人の声が重なった。里奈は処理中の表示を見比べたが、どれが最新のものか判断できなかった。生成AIを使わずに要約する用紙や、手動で担当者へ知らせる決まった欄はあったのに、どの合図でそこへ戻るのかは決まっていなかった。

部屋の奥では、回答を待つ担当者が画面を何度も更新していた。誰かはメモ帳に問い合わせを書き写し、誰かは自分の記憶だけで分類を始めた。手動対応へ切り替える人も、別のAIへ移す人も決まっていないため、みんなが善意で動き、少しずつ同じ作業を重ねていた。

航がTeamsに「原因を確認中」と投稿した。けれど、その言葉の次に何をするかは書けなかった。里奈は受信箱の未処理件数を見て、指先を止めた。

しばらくして、部長の佐伯がサポート室に入ってきた。いつものように穏やかな顔だったが、手には印刷した問い合わせ一覧を持っている。佐伯は里奈と航を見て、静かに尋ねた。

「今は待つのか、別の方法に切り替えるのか。どちらにする?」

里奈は答えようとした。けれど、切り替えを宣言する人も、切り替える時刻も、戻る条件も、どこにも書かれていなかった。白い画面の前で、彼女の言葉だけが返事を失った。

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第3章 地下の会議室で、手動切替の地図を広げる

地下会議室でClaude API障害の切替図を囲む社員たち

第3章 地下の会議室で、手動切替の地図を広げる - 本文

障害が落ち着いた夕方、航は里奈と各業務の担当者を、地下の小さな会議室に集めた。蛍光灯の白い光の下で、机には前回の障害時に残った未処理の問い合わせ一覧が置かれている。紙の端には、同じお客様へ二度返信しかけた跡もあった。 「今日は、原因探しだけで終わらせません。次に止まったとき、どう動くかを決めます」 航はそう言って、白いホワイトボードに一本の線を引いた。

里奈は、まだ胸の奥が重いのを感じていた。Claude APIが戻ったあとも、どの問い合わせを再処理し、どれを人が確認したのか、記録をたどるだけで時間がかかった。 「止まった瞬間、私はずっと待っていました。待つしかないと思っていたんです」 「だから、待つ時間にも名前をつけます」 航はボードの左端に、Operationalと書いた。

「Operationalは、いつもどおり動いている状態です。問い合わせをClaude APIへ送り、要約を人が確認して、担当者へ渡す。今までの流れですね」 航は次に、少し右へDegradedと書いた。 「Degradedは、返事が遅い、一部だけ不調、という状態です。この段階では急いで全体を変えません。公式情報を確認しながら待ち、必要なら承認済みの代替AIも調べます」

「遅いだけなら、すぐに手作業へ変えないんですね」 営業担当の大川が尋ねた。 「はい。けれど、待つ条件を決めておきます。何度も再試行して、同じ仕事を重ねないことも条件です」 航は、前回の重複処理の記録に赤い丸をつけた。里奈は、その赤丸が小さな火種のように見えた。

ボードの中央には、Partial Outageが加わった。 「これは一部の機能や業務に影響が出ている状態です。たとえば要約だけ止まり、問い合わせの受付は動いている場合ですね。業務全体を止めず、影響した部分だけを手作業や別の道へ切り替えます」 「全部を止めなくていい……」 里奈の声が、少し明るくなった。

最後に、航は右端へMajor Outageと書いた。 「広い範囲で使えない状態です。このときは、あらかじめ決めた代替AIや手作業へ、全面的に切り替えます。手動切替は、誰かがその場の思いつきで別のツールを使うことではありません」 航はペンを置き、みんなの顔を見た。 「発動する条件と、動く担当者を先に決めておくことです。迷わないための地図なんです」

航はノートパソコンを開き、Anthropicの公式ステータスページを表示した。過去のインシデント情報も横に並べ、さらにSNSの投稿と第三者監視サービスの画面を開いた。 「障害を一つの画面だけで決めません。公式ステータス、過去の障害記録、SNS、第三者監視。この四つを照らし合わせます」 「それでも、自社だけの不調かもしれませんよね」 情シスの後輩が言った。

「そのとおりです。だから、小さなテスト入力を一つだけ送ります。個人情報を含まない、短い言葉です」 航は「テスト」とだけ書いた入力を送った。接続そのものが失敗すれば自社のネットワークや設定を確認し、サービス側のエラーならAnthropic側の状況と比べる。利用上限に達した、つまり短い時間に送りすぎた状態なら、レートリミットとして記録し、再試行を止める。 「三つを分けて考えるだけで、次の動きが変わります」

経理の真紀が、未処理一覧を指でなぞった。 「切り替えたあと、誰が何をするかも必要ですね」 航はボードに五つの欄を作った。検知する人、切替を決める人、代替手段を動かす人、社内へ知らせる人、そして対応を記録する人の欄だった。 「一人で全部を抱えません。検知した人は事実を伝え、判断者が切替を宣言します。その後は担当者が手順に沿って動きます」

里奈の名前は、代替手段を動かす欄に書かれた。手元の紙には、問い合わせを受付番号、顧客名、要点、緊急度に分けて書く様式がある。回答案はテンプレートから選び、送信前に必ず人が原文と照らし合わせる流れだった。 「AIが止まったときだけでなく、回答を信じられないときも、この手順に入ります」 航の言葉に、里奈はうなずいた。便利な答えが出ても、最後にお客様へ届ける責任は人に残る。そのことを、今日の白い画面が教えてくれていた。

「RTOとRPOという言葉も、難しくありません」 航はボードの隅に二つの短い線を描いた。 「RTOは、どれくらいで仕事を戻すか。RPOは、どこまでの作業を守るかです。今回なら、AIが戻る時間を待つだけでなく、手動処理へ切り替え終わる時間も決めます。途中までの記録を失わないよう、受付番号と作業者を残します」 「戻るまでの時間と、守る記録ですね」 里奈が言うと、航は笑った。

四つの段階の下に、切替条件が書き込まれた。応答の遅れが続き、公式情報とテスト結果から影響が確認できたら、まず影響した業務だけを切り替える。広い範囲で失敗し、復旧の見込みを待つより手動のほうが早いと判断したら、全面切替を宣言する。 「では、誰が宣言しますか」 部長の問いに、航は里奈ではなく、業務責任者の名前を書いた。里奈には通知と現場の取りまとめを任せ、判断を一人に集中させない形にした。

会議が終わるころ、地下の空調音が少し大きく聞こえた。里奈は未処理一覧の横に、新しい一枚の紙を置いた。そこには、待つ条件、切り替える条件、担当者、記録の場所が、短い言葉で並んでいる。 「航さん。明日、実際に切り替える練習をしてみませんか」 その声には、朝の白い画面を見つめていたときの迷いがなかった。

「やってみましょう。まずは、問い合わせの一部だけで」 航が答えると、真紀は紙の様式をそっとファイルへしまった。翌朝、Claude Codeの処理を止めた想定で、里奈たちは受付から記録までを手でたどることになった。地下のホワイトボードには、待つための線と、切り替えるための線が、並んで残っていた。

04

第4章 GPT-4oのテスト画面に、思わぬつまずきが現れる

GPT-4oと手動切替カードを確認するサポート担当者

第4章 GPT-4oのテスト画面に、思わぬつまずきが現れる - 本文

午前10時、里奈たちは会議室の大きな画面を囲んでいた。Claudeを使わず、GPT-4oと手作業だけで問い合わせを処理する訓練の日だった。白い画面の代わりに、青いテスト画面と数枚の紙が机に並んでいる。

「今日は、うまくいかないところを見つける日です」

航は、Microsoft Teamsのチームにある「ファイル」タブを開いた。共有フォルダーの一番上に、新しいPDFが置かれている。名前は「生成AI停止時の切替カード」だった。

「紙にも印刷しました。ネットワークが不安定でも、これだけは見られるようにします」

カードには、障害レベルごとの判断者が書かれていた。Criticalは航が即時に判断し、Highは30分以内に運用責任者へ知らせる。Mediumは翌営業日、Lowは週次の確認に回す。代替AIはGPT-4oで、使えないときは手動テンプレートへ戻る。

さらに、情シス当番と顧客対応リーダーの連絡先、手作業で使う回答文、重要案件の承認者、復旧後にClaudeへ戻す手順も記されていた。カードの下には、障害対応の順番が太い矢印でつながっている。

検知 → 切り分け → エスカレーション → 代替提供 → 根本解決 → 周知 → 記録

Critical:即時 High:30分 Medium:翌営業日 Low:週次

「前は、Claudeが止まったら全部を一度に別のAIへ渡そうとしていました」

里奈がカードを指でなぞった。

「でも、仕事を分けて考えるのですね」

「そうです。まず問い合わせの分類だけを切り替える。回答案、担当者への通知、記録の保存は、影響を見て一つずつ切り替えます」

航はテスト用の問い合わせを開いた。顧客名、注文番号、メールアドレスを仮の文字に置き換え、本文から社外秘の値も削った。GPT-4oの入力欄には、あらかじめ作った文を貼り付ける。

入力は匿名化済みの問い合わせです。分類は「料金」「操作」「障害」「契約」の四つから一つ選んでください。分類の根拠を一行で示し、要約は80字以内にしてください。不明な点は推測せず「確認要」と書いてください。

「個人情報や社外秘の内容は、そのまま入力しません。削ると判断できない案件は、代替AIを使わず手作業に戻します」

里奈が送信を押すと、GPT-4oはすぐに返事を出した。だが、分類は「操作方法」と表示され、管理表で使っている「操作」というラベルと合わない。要約も120字ほどあり、Excelの一つの欄からはみ出してしまった。

「動いたのに、貼れません……」

「AIが動けば終わり、ではないですね。前後の仕事もつなぎ直します」

里奈は一度、回答を業務用の管理表へ貼るのを止めた。まず「切替テスト」という別のExcelシートを作り、受付時刻、仮番号、分類、要約、担当者、確認者、送信時刻の列を並べた。GPT-4oの答えはそこへ仮置きし、里奈が分類を四つの正式ラベルから選び直す。

航は入力文を少し直した。「分類欄には料金・操作・障害・契約のどれか一語だけ」と加えた。要約の長さも「60字以内」に変えた。それでも余分な説明が残ったため、里奈が画面上で不要な文を削り、修正した人の名前と時刻を記録した。

次は担当者への通知だった。普段ならClaudeの処理が終わると、Teamsに担当者宛ての通知が出る。しかしGPT-4oの返答は、その自動通知につながっていなかった。里奈が回答案を貼り付けても、担当者の画面には何も届かなかった。

「通知がないと、分類できても仕事が止まります」

航はカードの裏面を開いた。そこには、手動通知の文が印刷されている。

【AI停止・要確認】仮番号:__ 分類:__ 要約:__ 担当:__ 一次確認期限:__ 確認後に✅を付ける

里奈はこの文をTeamsの担当チャネルへ投稿した。担当者名を本文の先頭に書き、受け取った人には✅のリアクションを付けてもらう。30分たっても反応がなければ、顧客対応リーダーへ電話する。画面の表示が普段と違っても、誰が受け取ったかを追える形になった。

三件目の問い合わせには、返金と契約変更が含まれていた。GPT-4oは回答案を作ったが、里奈は送信ボタンに手を伸ばさなかった。

「これは例外ですね。AIの文章を、そのまま顧客へ送ってはいけません」

彼女は原文と社内規定を照らし合わせ、管理表の「確認要」に印を付けた。担当者が事実を確認し、リーダーが承認してから送る。個人情報の漏えいが疑われる案件や、内容に自信が持てない案件も、同じく手作業の確認へ回すことにした。

訓練の最後に、航はClaude APIが復旧した想定を伝えた。すぐに全業務を戻すのではなく、まず少数の問い合わせでClaudeの分類と回答を確認する。次に新しい受付だけを戻し、滞留分は手動処理を続ける。通知と記録まで正常だと確かめてから、切替完了時刻と未処理件数をカードへ追記する。

「復旧は、画面が開くことだけではないのですね」

「はい。検知から記録まで、流れが戻って初めて復旧です」

里奈はテスト表の最後の欄に、こう書いた。『GPT-4oは分類の補助に使用。外部送信は担当者確認後。返金・契約・個人情報は手動承認』。白いままだった画面を見つめていた朝とは違い、今度は紙と表とTeamsが、次の一手を静かにつないでいた。

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第5章 停止した朝、赤い札からGPT-4oへ

Claude API停止時にGPT-4oへ切り替える支援チーム

第5章 停止した朝、赤い札からGPT-4oへ - 本文

朝の光が、青葉ノート社の窓辺に細く差し込んでいた。里奈が開いた画面には、問い合わせの本文だけがあり、Claude APIの回答案は白いままだった。前回なら、担当者たちがそれぞれ再読み込みを繰り返していた時間だった。

「まず、切替カードを見ます」

里奈は机の横から、赤い札のついたカードを取り出した。そこには、最初に小さなテストをすること、公式ステータスと第三者情報を確認すること、判断者を航にすることが書かれていた。里奈は低リスクの問い合わせを一件だけ送り、画面が返らないことを記録した。

Teamsには、前のような慌ただしい声が流れなかった。里奈はAnthropicの公式ステータス画面を開き、別の障害情報も確認した。Claudeの一部機能だけが止まり、社内ネットワークやAPIキーの問題ではなさそうだった。

航は資料を並べ、静かに画面を見た。

「これはPartial Outageです。一部だけ止まる状態ですね。全部を止めるのではなく、影響のある仕事だけを動かします」

航が赤い札を裏返すと、切替先の表が現れた。問い合わせの分類はGPT-4oへ移す。回答案の作成も、一般的な内容に限って使う。機密性の高い案件や、判断が難しい案件は、AIへ送らず手動テンプレートで処理する決まりだった。

その線引きには、理由があった。生成AIの出力には、もっともらしい誤りが混ざることがある。顧客情報や未公開情報を入力すれば、別のリスクも生まれるため、代替AIに切り替えれば安心という話ではなかった。

航が開いた障害対策資料には、Claude APIの稼働率が約99.41%と整理され、月あたり2〜3時間の停止リスクが示されていた。数字の出典は「生成AI停止リスクの重要性 / 手動切替の発動条件・判断基準」と記されていた。短い停止でも仕事の流れが詰まるからこそ、復旧を待つだけでなく、切り替えて続ける道が必要だった。

同じ資料には、システム停止のコストに関する参考値もあった。全企業平均では1分あたり約14,000ドル、Large企業では1分あたり約23,750ドルとされている。ただし、それは青葉ノート社の損失額ではない。航は会社固有の金額に置き換えず、止まった時間が事業へ広がる重さだけを確認した。

別のページには、GENAIが1年半の運用で30分以内の代替AI切替を実証した事例が載っていた。出典は「手動切替先と代替手段 / 切替を実行する業務フロー」だった。それは青葉ノート社の成果ではない。それでも、航はその事例を見ながら、自分たちのカードを現場で使える形にしておいた。

航がTeamsに切替開始の通知を出すと、赤い札の内容がそのまま共有された。対象業務は問い合わせの分類、代替手段はGPT-4oと仮置き表、確認担当は里奈、重要案件の承認者は航、と明記されていた。最後には、Claudeの復旧を確認した後、代替処理の履歴を見直して通常運用へ戻す、と書かれていた。

「分類結果は、私が一件ずつ見ます。機密案件は表の手動テンプレートへ回してください」

里奈の声に、迷いはなかった。担当者たちは通知を読み、同じ表を開いた。誰かが航を探して走ることも、同じ問い合わせを何度も送り直すこともなかった。

GPT-4oは、問い合わせをいくつかの種類に分け、回答案を返した。里奈は画面の横に顧客との過去のやり取りと社内規定を置き、根拠のない部分を一つずつ削った。日付のない約束や、確認できない返金条件は、丁寧な言葉だけが残っていても送信しなかった。

重要案件の前では、航が立ち止まった。里奈が原資料を示すと、航は内容を承認してから送信欄を押した。送った文面と確認者の名前は、仮置き表の対応履歴に残った。

窓の外では、雲がゆっくり動いていた。受付箱の問い合わせは途切れず、対応に時間のかかる案件もあったが、仕事の流れは細くても続いていた。前回、白い画面を見つめていた里奈の肩は、今日は少し下がっていた。

午後、Claudeの一部機能が復旧した。航はすぐに全員を元へ戻さず、代替AIで処理した案件を確認した。履歴と承認記録を照らし合わせ、抜けがないことを確かめてから、Teamsに通常運用へ戻す通知を出した。

「戻すときも、カードに沿うんですね」

里奈がそう言うと、航は赤い札を机の端へ戻した。

「止まったときだけでなく、戻るときにも人が確認する。それで、仕事の責任が見えるようになります」

夕方の窓辺には、朝よりやわらかな光があった。白いままだった画面は戻っていたが、里奈の手元には、記録の残った表と、少し角の丸くなった切替カードが残っていた。

06

第6章 引き出しの赤い札と、いつもの夕方

夕暮れの窓辺でClaudeと赤い切替カードを確認する担当者

第6章 引き出しの赤い札と、いつもの夕方 - 本文

障害から数日たった夕方、青葉ノート社のサポート窓口には、いつもの静かな音が戻っていた。キーボードを打つ音と、遠くで鳴る電話の音が、窓辺の光に重なっている。里奈は机の引き出しを開け、赤い切替カードを指でなぞった。

カードには、障害の重さ、最初に見る場所、代わりに使うAI、手作業の文面、連絡先、復旧の手順が、一枚の上でつながっていた。以前なら、頭の中や人それぞれのメモに散らばっていたものだ。里奈は端の折れ目を伸ばし、カードを引き出しの奥へ戻した。

そのころ、Teamsの障害連絡チャンネルには、Anthropicの公式ステータスと社内の確認結果が順番に届いていた。通知は大きな音で一度に押し寄せず、担当者は自分に必要な連絡だけを開いている。赤い表示を見た人が、すぐに判断役へ知らせる流れも、画面の上に残っていた。

「もう、誰かの記憶を探さなくても動けるね」

隣の席で、入社したばかりの美咲がうなずいた。里奈は引き出しからカードを取り出し、モニターのClaudeが動いている画面と、白い紙のテンプレートを机の上に並べた。

「左は、AIが動いているとき。問い合わせを分類して、回答案を作って、人が確認するの。右は、動いていないとき。内容を読む人、分類する人、回答を書く人を分けて、同じように最後は人が確認するよ」

美咲は紙の空欄を見つめた。そこには、問い合わせの原文、確認した資料、返した文面、判断した人の名前を書く場所があった。里奈は難しい仕組みの話をせず、実際に使う画面と鉛筆だけで説明した。

「最初に異変を見つける人。切り替えを決める人。お客さまへの返事を確認する人。最後に記録を残す人。役目は、先に分けてあるの」

小さな訓練の日には、Teamsへテストの連絡が流れた。『Claudeの応答が返らない』という一文を見て、美咲が時刻を記録し、別の担当者がAnthropicの公式ステータスを確認した。

里奈は赤いカードを開き、障害レベルを読み上げた。判断役が手動切替を伝えると、分類はGPT-4oへ移り、重要な問い合わせは紙のテンプレートに沿って人が確認した。別の担当者はお客さまへの案内文を読み、最後の一人がTeamsと共有台帳へ経過を書き残した。

訓練が終わると、誰も急いで片づけなかった。どこで迷ったか、どの連絡が早すぎたかを、カードの余白に短く書き加えた。赤い札は、しまうたびに少しだけ使いやすくなっていった。

やがてClaudeが復旧した日も、里奈たちはすぐに元の画面へ戻らなかった。代替中に作った分類と回答案を一件ずつ見比べ、確認した資料と判断の記録がそろっているかを確かめた。

「戻ったから終わり、ではないんですね」

「うん。戻す前に、途中で起きたことを置き去りにしないの」

確認が終わると、Claude APIの回答案が画面に戻った。窓の外はすっかり暗く、ガラスには事務所の明かりだけが浮かんでいる。里奈の机の端には、引き出しへ戻したはずの赤い切替カードが一枚、明日の訓練を待つように残っていた。

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著者について

鈴木信弘(SNAMO)

鈴木信弘(SNAMO)- 静岡県焼津市を拠点に活動する総経験19年のフルスタックエンジニア。AI時代の次世代検索最適化技術「レリバンスエンジニアリング」の先駆的実装者として、GEO(Generative Engine Optimization)最適化システムを開発。2024年12月からSNAMO Portfolioの開発を開始し、特に2025年6月〜9月にGEO技術を集中実装。12,000文字級AI記事自動生成システム、ベクトル検索、Fragment ID最適化を実現。製造業での7年間の社内SE経験を通じて、業務効率75%改善、検品作業完全デジタル化など、現場の課題を最新技術で解決する実装力を発揮。富山大学工学部卒、基本情報技術者保有。

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よくある質問

Q1生成AIが停止したとき、中小企業は最初に何を確認すべきですか?
まず、自社のシステム障害なのか、AIサービス提供側の障害なのかを切り分けます。そのうえで、どの業務が影響を受けているか、処理の重複や未処理が発生していないかを確認します。原因の特定に時間をかけすぎず、あらかじめ定めた条件に基づいて手動切替を判断することが重要です。
Q2Claude APIが使えない場合、業務を止めないためにはどうすればよいですか?
すべての業務を一度に切り替えるのではなく、影響を受けている部分だけを代替手段へ移します。記事では、問い合わせ分類をGPT-4oへ切り替え、重要案件の回答作成は手作業で行うなど、業務を分解して対応しています。
Q3生成AI障害時の手動切替には、どのような手順が必要ですか?
「障害の検知」「影響範囲の確認」「代替手段への切替」「処理内容の記録」という段階を設けます。誰が切替を決め、誰が手動処理を行い、誰が承認・記録するのかを事前に決めておくと、障害時にも迷わず対応できます。
Q4AIの再試行による重複処理を防ぐにはどうすればよいですか?
再試行する前に、対象の処理がすでに完了していないかを確認し、問い合わせごとに受付番号や処理状況を記録します。障害時には仮置き表などで「未処理」「処理中」「完了」を管理し、同じ案件を二重に処理しない仕組みを用意します。
Q5Claudeの代わりに別の生成AIを使う場合、注意すべき点は何ですか?
AIごとに出力形式や内容が異なるため、そのまま既存の業務フローに組み込めるとは限りません。GPT-4oなど別のAIへ切り替える場合は、出力項目の確認、形式の変換、人による確認・承認を組み込み、誤回答や処理漏れを防ぎます。
Q6Teamsなどの通知機能が使えない場合、どのように連絡すればよいですか?
メール、電話、共有ファイル、紙の一覧表など、別の通知手段をあらかじめ決めておきます。記事では、Teams通知に不具合が起きた際に手動通知へ切り替えています。重要案件については、通知した人と確認した人を記録することも大切です。
Q7生成AIの復旧後、すぐに通常運用へ戻しても問題ありませんか?
すぐに戻すのではなく、障害中に手動処理した案件や代替AIで処理した履歴を確認します。未処理・重複・承認漏れがないことを確認したうえで、段階的に通常運用へ戻します。復旧後も一定時間は処理状況を監視すると安全です。
Q8生成AIの停止に備えて、企業が事前に準備しておくべきものは何ですか?
手動切替の条件、切替カードやチェックリスト、代替AI、手作業の手順、通知手段、担当者の役割分担を準備します。さらに、実際の停止を想定した訓練を行い、切替から承認、履歴記録、通常運用への復帰までを確認しておくことが重要です。